マニャール: ヴァイオリンソナタ
引き続きイザイと関係の深かった作曲家の作品を取り上げる。Andrew Hardyというヴァイオリニストがイザイに献呈されたソナタを集めたCD4枚セットのアルバムを出していたが、配信では聴けないようである。そこに含まれるのは、フランク、ラザーリ、ロパルツ、マニャール、ルクー、ヴィエルヌ、ジョンゲン、サマズイユの8人。今回はその中のマニャールを配信に上がっている他の演奏で聴くことにする。マニャールはパリに生まれパリ音楽院に学んだ後にダンディの弟子となる。前回取り上げたロパルツとは1つ違いで、この3人の絆は深いものであったといわれる。
Albéric Magnard:
Violin Sonata in G Major, Op. 13
Geneviève Laurenceau (vn)
Oliver Triendl (pf)
(2012)
このヴァイオリンソナタは1901年(36歳)の作。非常に念入りに書かれ、技巧的要求も高く、また内容も多彩な聴きごたえのあるソナタである。第1楽章はヴァイオリンのD音に導かれて一気にこの作品の世界に引き込まれる。第1主題でこのLaurenceau / Triendlの演奏は少し速めのテンポを取ってテーマを躍動的に浮き立たせていて効果的。デュメイ / コラールの演奏と聴き比べるとわかりやすい。そちらは(一緒に入っているルクーがやや荒いのに対して)マニャールでは腰を据えたテンポで丁寧な演奏を聴かせる。夜想曲風の第2楽章は平穏で時間を忘れそうな優美さを持つ。後半に出てくるピアノのさざ波のような音型は聴かせどころだろう。滑らかなピアノの響きが素晴らしい。比較的短い第3楽章を経て、終楽章にはシューマンに似た不穏かつ情熱的なフレーズも出てくるが、最後は第2楽章に似た平穏な雰囲気が支配的となりそっと長調に転調して終わる。佳品である。
(Mar. 25, 2023)