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// by 折場 捻人

ショーソン: 詩曲(ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏版)

ダンディとくればショーソンも聴きたくなる。どちらも同じフランク門下で、ショーソンの方が4歳年下だ。有名な『詩曲(ポエム)』はピアノ伴奏でも演奏されるが、この版はそれに弦楽四重奏が加わったもの。IMSLPに編曲者の署名も何も書かれていない手書きの楽譜がある(そこでは作曲者の編曲とされている)。見ると他のショーソンの自筆譜とは素人目には筆跡が異なるように思われるのだが、オリジナルの自筆譜だとは限らないわけだし、別のサイトでは編曲者不明だという情報もあり、結局どういうことなのかよくわからない。

Ernest Chausson: Poème, Op.25
Gérard Poulet (vn)
Denis Pascal (pf)
Quatuor Benaïm
(2005)

ピアノ伴奏版は確かにフルオーケストラ伴奏の原曲に比べて音は薄くなるが、独奏ヴァイオリンに酔うのであれあば不足はない。むしろ実演ではこのバージョンに接する機会の方が多いと思う。だが冷静に聴けば伴奏が点描的になり十分な「うねり」も出し難いわけで、このように弦の四重奏が加わればその欠点は補える。もちろん絶対的な音量・音色の振幅やはオケと比べるべくもない(ただ、あまり派手派手しいオケ伴奏の演奏だと絵空事に聴こえかねないので好きではない)し、そもそも増えた人数を頼みにオケと張り合うなどはなから有り得ないわけで、そうではなく室内楽らしい親密感や音の凝集性を味わうのがこの編曲の眼目だろう。

もともとショーソンの別の代表作『ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のためのコンセール』の特殊な編成を生かし、その演奏機会に同じ編成で『詩曲』をやったらどうかという意図で編曲されたらしい。ピアノの立場としては独奏か伴奏かという違いがあり、当然ながら両曲で活躍の度合いは大きく異なっている。なお、このアルバムにも『コンセール』がメインプログラムとして収められており、どちらも品格のある優れた演奏である。

(Apr. 15, 2023)