ジョンゲン: ピアノ三重奏曲
ベルギーの作曲家ジョンゲンも、同郷の先輩イザイにヴァイオリンソナタを献呈しているが、そのソナタ(第1番の方)の録音は配信では見つからなかった。とはいえ、その知名度の割には多くの音源があるようだ。その中から、ごく若い頃(23歳)の作品であるロ短調のトリオを聴いてみる。
Joseph Jongen: Trio in B Minor, Op. 10
Ensemble Joseph Jongen
Diane Andersen (pf)
Eliot Lawson (vn)
Mark Drobinsky (vc)
(2006)
チェロの代わりにヴィオラの入るトリオ(作品30)も作曲しているが、こちらは通常のヴァイオリン、チェロ、ピアノのトリオである。ロマンティックな楽想が何の衒いもなく率直に提示される分かりやすい曲。以前マルクスの回でも似た思いをしたのだが、どことなく昭和時代のポピュラー音楽やある種のTVドラマ音楽が連想される。真似というわけでもなかろうが、共通するものを感じるのはどちらもいわゆるロマン派音楽のイディオムに忠実ということなのだろう。ただ、第2楽章のピアノソロが奏するフレーズや、後半で第3楽章テーマがさりげなく顔を出す構成などは、そのような中でもはっとさせられるものを持っている。他にも比較的有名な『オルガン協奏交響曲』を含めいろいろ聴いてみたのだが、ジョンゲンの音楽はやや実直すぎて屈折したところが少なく、展開にしても起伏だったり切実さだったりが今一歩欠けるように思う。その辺があまり取り上げられない原因なのかもしれない。
(出典: imslp.org)
このピアノトリオは幼い頃彼に作曲を教えた父に献呈された(ジョンゲンの父親は作曲家というわけではなく、家具工芸家/職人だったとされている)。また、IMSLPにある楽譜の表紙右上にはジョンゲン自身による、「リエージュ、1904年11月12日」付の書き込みがある。一部読み取れないのだが、ゴドフスキーによるショパンのエチュード(の演奏?)に関して、称賛するような内容かと思われる。
こちらはジョンゲンの故郷リエージュのオーケストラによる『オルガン協奏交響曲』の演奏。サン゠サーンスの『交響曲第3番(オルガン付き)』との組み合わせである。オルガニストでもあったジョンゲン一流の、オルガンが主役で大活躍する豪華絢爛な曲(元々オルガンのお披露目のために委嘱された)であるが、何か特別めでたい気分に浸りたいときに実演で聴くべきものかなとは思う(どちらも滅多にないのが残念)。
Joseph Jongen: Symphonie concertante Op. 81
Olivier Latry (org)
Orchestre Philharmonique de Liège
Pascal Rophé (cond)
(2006)
(Apr. 22, 2023)