エッレル: 抒情的組曲
配信アプリのおすすめに知らない作曲家が出てきた場合、そのアルバムリストに移動して見聞を広めようという気になることも多々あったりする。年末にペルトを聴いたせいだろう、同じエストニアの作曲家でペルトの師でもあるヘイノ・エッレルという人がそんな感じで視界に入ってきた。おすすめされたのはヴァイオリン協奏曲を含むアルバムだったが、ちょっと聴いてみたら芯の強い音楽で悪くないと思ったので、引き続きリストにあった"Neenia"というタイトルのアルバムを聴いた。弦楽アンサンブルの小品集である。
Heino Eller: Lüüriline süit (Lyric Suite)
Tallin Chamber Orchestra
Tõnu Kaljuste (cond)
(1999)
冒頭に置かれた『抒情的組曲』は数分程度の短い曲6つから成る組曲で、曲ごとのタイトルは特にないようだ。透明感があってべたべたしない雰囲気は、以前に取り上げたアッテルベリに非常に似ていると思った(第4曲 "Allegretto grazioso" など)。アッテルベリはほぼ同時代のスウェーデンの作曲家、エストニアとは因縁浅からぬ国だ。ただ、二人の間に接点があったという話はちょっと見あたらない。第2次大戦期からソ連崩壊に至るまで多くの芸術家がソ連およびナチスドイツからの迫害を逃れてエストニアからスウェーデンに亡命しているという。1887年生まれのエッレルは亡命組ではなかったが、ユダヤ人だった妻をナチスに殺害されている。この組曲はその頃にピアノ曲として作曲されたものらしい。アッテルベリには少ない沈痛な響きが時に聴かれるとともに、ペルトに繋がる要素もまた容易に見出すことができる。
(Jan. 14, 2023)