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// by 折場 捻人

バッハ: フーガの技法(ヴィオール・コンソート版)

確かパーセルのヴィオール音楽を探していてこのLes Voix Humains(レ・ヴォワ・ユメーヌ)というグループに行き当たり、そのディスコグラフィーに『フーガの技法』があったので聴いてみたという経緯だったと思う。Les Voix Humainsはカナダのヴィオール合奏グループ。ヴィオール合奏による『フーガの技法』の演奏としては既に英国のFretwork(フレットワーク)が2001年に録音した演奏があり、そちらはヴィオールをバッハの直線的な音楽にぐっと引き寄せたという感じで、エマーソン四重奏団による演奏(2003年)に馴染んでいた耳には普通に聞こえるのだが、対照的にこのLes Voix Humainsの演奏は、よりアグレッシブにバッハの方をヴィオール・コンソート音楽へと引き寄せた一品になっていると思う。

何よりMessa di voce奏法で音の立ち上がりが強調されないため、拍よりも流れの方に自然と意識が向かうし(かと言って拍が不正確なのではない。むしろ驚くほど4人の呼吸が合っている)、長音に付けられるデュナーミクの山が縦の和声を立体的に強調するので、声部の動きを追うよりも滲みのある瞬間ごとの響きの美しさに聞き惚れているうちに気づけばコーダに至っているという感じである(2声のカノンについては横の流れがよりはっきりと出るだけにそうでもないが)。フーガの専門家でもない人間にはちょうどよい、楽に浸ることのできる『フーガの技法』の演奏だ。

Johann Sebastian Bach: The Art of Fugue,
BWV. 1080
Les Voix Humaines
(2012)

 

(Jan. 7, 2023)