フォーレ: イン・パラディスム(ピアノ独奏版)
前回は夜想曲全曲のアルバムに限って聴いてみたが、全曲盤でないものにも素晴らしい演奏は勿論いくつも見つかる。例えばこれは『フォーレ・リサイタル』と銘打って今までに独奏曲集を2枚リリースしているルイ・ロルティの2枚目のアルバム。
Gabriel Fauré: "In paradisum" (from "Requiem")
Arr. L. Lortie for piano
Louis Lortie
(2019)
夜想曲と舟歌からそれぞれ数曲と少し長めの曲である『バラード』『主題と変奏』の計9曲をランダムに散りばめ、加えて前後に置かれた『レクイエム』からの2曲(『ピエ・イェス』と『イン・パラディスム』)でそれらを挟み込む形になっている。『バラード』はロルティ自身以前にオーケストラ伴奏版も録音しており、思い入れのある選曲なのかもしれない。夜想曲からは7, 10, 11, 13番の4曲、特に第13番は最後に置かれ、それに続けて『イン・パラディスム』が奏されるのだが、この配列が絶妙で、漆黒の闇へと身体を横たえるごとくに終わる第13番の後に静かに聞こえてくる祈りのアルペジオ音型が感動的だ。『レクイエム』からピアノ独奏に合う2曲を編曲し、おそらく最も効果的な場所に置いて聴かせるという、それだけをとっても素晴らしく秀逸なプログラムである。
(Feb. 18, 2023)