ゲルンスハイム: ピアノ四重奏曲第3番 / ピアノ五重奏曲第2番
ゲルンスハイムという作曲家を知ったのは昨年あたり、配信でだが、どういう経緯だったか忘れてしまった。ブラームスの6つ下、ブルッフと同世代で1839年にフランクフルト・アム・マイン近くに生まれたゲルンスハイムは、ライプツィヒ音楽院などで学び、ヒラーに請われてケルン音楽院に職を得たのを皮切りに、ロッテルダムを経てベルリンのシュテルン音楽院教授になるなど、その経歴はバルギールに似ており、またそこから想像できる通りの模範的(?)ロマン派作曲家である。
最初に聴いたのはBrilliant Classicsレーベルから出ていたピアノ四重奏曲集だった。『第3番』が優れた曲だと思ったが、最近になってその新しい演奏があるのを見つけた。より解像度が高い感じである。曲はどの楽章にもきれいでわかりやすい「くすぐり」や「泣き」が散りばめられていて、その最たるものが第3楽章の中間部だろう。映画音楽のように甘い盛り上がりは直球勝負に過ぎるかもしれないが、この頃はそういう手法もまだ今のように手垢にまみれてはいなかったのではないだろうか。
Friedrich Gernsheim: Piano Quartet No. 3
in F Major, Op. 47
Mariani Klavierquartett
(2021)
さらに10年ほど後のベルリン時代の作品である『ピアノ五重奏曲第2番』は、編成の大きさもあって一段と華麗さを増している。全楽器が持てる力と情熱を開放するような第4楽章は圧巻である。上の四重奏曲と同じく、理屈抜きで楽しめる作品であることは間違いない。より新しいCPOレーベルの録音もあるが、こちらの方が鋼っぽい質感があって好みだ。
Friedrich Gernsheim: Piano Quintet No. 2
in B Minor, Op. 63
Edouard Oganessian (pf)
Art Vio String Quartet
(2009)
(May 11, 2024)