ハウエルズ: 弦楽合奏のための協奏曲
前回取り上げた弦楽合奏版『去り行くつばめ』からのつながりで見つけたアルバム。弦楽合奏曲のアンソロジーで、ヴォーン゠ウィリアムズの『タリス幻想曲』、エルガーの『序奏とアレグロ』に加え、ハウエルズの『弦楽合奏のための協奏曲』が入っている。ハウエルズは、それらヴォーン゠ウィリアムズとエルガーの2曲をほぼ同時に耳にして多大な影響を受けたらしいから、このアルバムでもそのことをプログラムのテーマの一つとしているのだろう。ハーバート・ハウエルズは1892年生まれ。モーラン、アイヴァー・ガー二ー、アーサー・ブリスらと同世代で、彼らと同じく王立音楽大学でスタンフォードに作曲を師事している。
Herbert Howells: Concerto for String Orchestra
Sinfonia Of London
John Wilson (cond)
(2021)
両端楽章の急速部分は、おそろしくハキハキと話す人が自信たっぷりに語るようなエネルギーがあり、同時にスタイリッシュで格好いい。ときどきヴォーン゠ウィリアムズの『タリス幻想曲』のような独奏(特にヴィオラ)の使い方が見受けられる。第2楽章は、"In Memoriam, E.E.(1934) and M.K.H.(1935)" というタイトルを持っており、1934年に逝去したエルガーと、その翌年、わずか9歳でポリオのために早世したハウエルズ自身の息子マイケルを偲ぶ静謐な音楽になっている。この経験はハウエルズの音楽にも大きな影響を与え、その頃を境に合唱曲、オルガン音楽、教会音楽へと傾倒していく。ハウエルズの作品は比較的録音が多くあって、特にHyperionからは驚くほど大量のアルバムが出ているが、大部分がこれら後期の曲のようである(正直言って個人的にはその方面はあまり興味がないのだが)。なお、この曲の録音にはハウエルズの友人でもあったボールトのものや、同じChandosから出ていたヒコックスのものなど結構いろいろ見つかる。ハウエルズは非常に長生きで、没したのは1983年、その存命期間はボールトとほぼ重なっている(死去は1日違い)。そう聞くと随分最近の人のように思え親近感が湧いてくる。
(Nov. 4, 2023)