コルンゴルト: マリエッタの歌(ヴァイオリンとピアノ版)[最終回]
特に目標も定めず毎週続けてきたこのブログだが、100回の節目で終わることにする。2年ほど利用してみて(今更ながら)ストリーミングサービスの有用性はよくわかったので、今後は他のジャンルも今以上にいろいろ聴いてみたい。それにしても最終回にオペラのアリアの編曲を取り上げるとは思いもしなかったし(特段オペラを愛好するわけではないので)、コルンゴルトの回が計3回になるというのもまったく予想外である。数えてみると他にサン゠サーンスも3回、偶然だがどちらも没後に、いや存命中から既に、軽く見られてしまった作曲家という共通点があるかもしれない。
この曲はコルンゴルトの代表作で第一次大戦後に初演された甘美なオペラ『死の都』の中の一曲。同作から『ピエロの歌』と共にヴァイオリン曲に編曲され、コルンゴルトのヴァイオリン曲集にはたいてい(といっても数えるほどしかないが)両方が入っている。このアルバムもその一つ。
Erich Korngold: Mariettas Lied zur Laute
"Glück das mir verblieb"
from "Die tote Stadt" Op. 12
Josef Hell (vn)
Senka Brankovic (pf)
(2006)
このアルバムの『ヴァイオリンソナタ』については第3楽章末尾の音が納得いかないのだが、最後に置かれたこのアリアの自然な歌い方は秀逸だ。伴奏に対するずらし方が、やり過ぎにならない範囲の絶妙さであって粋だと思う。また残響が多めの録音も曲にふさわしい。
『死の都』は、10年ほど前にNHK-BSで深夜に放映されていたのを見たのが初めてだと思う。残念ながら録画しなかったので確認することはできない。YouTubeでその時と同じと思われる新国立劇場上演の5分ほどのゲネプロ映像があるのを観たが、本当にTVで観たのがこの舞台だったかどうかまったく思い出せない。途中で寝てしまったのかもしれない。その後バイエルン国立歌劇場上演版のDVDを入手した。『マリエッタの歌』は、第1幕でマリエッタとパウルが披露する短いが美しい二重唱で、劇中のハイライトのひとつである。同じ節を最後に一人になったパウルがしみじみと語るように歌う終幕の幕切れは忘れがたい。未練を断ち切ろうとしてなお未練を捨てきれない感じが哀愁そのものである。
(Aug. 3, 2024)