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// by 折場 捻人

ペルト: フェスティーナ・レンテ / グレツキ: 弦楽四重奏曲第3番

うんざりするような社会の閉塞感と理不尽さを思い、年末の慌ただしい中、二人の現代作曲家による祈りの音楽を聴いてみる。1995年前後に「ヒーリングミュージック」がブームとなり、こういう純粋音楽から単にアダージョ楽章を集めたものに至るまで「癒し」の惹句と共に数多のCDがリリースされたことがあった。その頃はなぜそういった傾向のものが流行るのか理解できなかったのだが、現在の状況下で聴いてみると非常に直接的に響いてくるものがある。

エストニアの作曲家ペルトの『フェスティーナ・レンテ』は、1987年、52歳の作品。一方のポーランドの作曲家グレツキの『弦楽四重奏曲第3番』は1995年、62歳の作品でクロノス四重奏団の委嘱による。グレツキに(不適当な)ヒーリング音楽のレッテルが貼られていたのは『悲歌のシンフォニー(交響曲第3番)』(1976)で特に名が広まったことによるものと思われるが、この四重奏曲に癒しはない。カタストロフィー後に地上を彷徨う魂の発する呻きのような音楽だ。

Arvo Pärt: Festina lente
Bournemouth Sinfonietta
Richard Studt (cond)
(1993)

Henryk Górecki: String Quartet No.3
(...songs are sung)
Kronos Quartet
(2007)

(Dec. 24, 2022)