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// by 折場 捻人

ラッブラ: ヴァイオリンソナタ第2番 / 弦楽四重奏曲第1番

20世紀のはじめ、共にイングランド北西部のランカシャーを故郷とするウォルトンとロースソーンが生まれたのと時期を同じくして、やや東のノーサンプトンではエドマンド・ラッブラとオルウィンが4歳違いで相次いで生まれている。何となく相似形の関係に思える。今回は、それら4人の中でまだ取り上げていなかったラッブラによるヴァイオリンソナタのアルバム。『第2番』は結構録音も残されていることからもわかるように3曲あるヴァイオリンソナタの中で最も見通しがよく、また魅力的な曲である。

Edmund Rubbra: Violin Sonata No. 2
Krysia Osostowicz (vn)
Michael Dussek (pf)
(1999)

第1楽章の何度も繰り返されるシンプルかつロマンティックなテーマ、第2楽章の終始憂鬱な雰囲気、第3楽章全体を覆うスペイン風のリズムの刻みなど、くどくなる一歩手前の危うさのある曲ともいえるのでテンポの選択が重要になるが、この演奏の現代的・合理的なテンポは申し分ないと思う。音色も素晴らしい。

作曲者自身がピアノを受け持った録音もNaxosから配信のみで出ているようだが(YouTubeにある)、手堅くまとめたという感じであまり印象には残らなかった。それよりもさらに前の時代、作曲されてから約15年後の1946年にイギリスのヴァイオリニスト、アルバート・サモンズがSP盤に残した演奏が興味深い。SP復刻ながらノイズが少なく聴きやすい(重音のピチカートが金属的な音で気になる程度)。第1楽章にはこの時代ならではのポルタメントの多用により深い彫りが与えられている。なぜかメニューインの弾くディーリアスのソナタが思い浮かんだ。共通するのはあくまで最初の雰囲気だけだが。なお、元N響奏者の鶴我氏が "The Secret of Technique in Violin Playing" という教本のことを書いていたが、その著者がサモンズである。

Edmund Rubbra : Violin Sonata No. 2
Albert Sammons (vn)
Gerald Moore (pf)
(1946)

そのほか、同じDuttonレーベルから出ている弦楽四重奏曲も聴いてみた。『弦楽四重奏曲 第1番』の第2楽章、足を引きずるような重いリズムの両端部に囲まれたコラール風の中間部が特に心に残った。この四重奏曲は上の『ヴァイオリンソナタ第2番』と同じ初期の作品で、ヴォーンウィリアムズの興味を引いたという。なお、ソナタでヴァイオリンを弾くOsostowiczはこの四重奏団の第1ヴァイオリンでもあるとのこと。

Edmund Rubbra : String Quartet No. 1
in F Minor
Dante Quartet
(2002)

(Dec. 9, 2023)