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// by 折場 捻人

サンサーンス: ピアノ五重奏曲

サンサーンスがまだ20歳の頃に作曲された『ピアノ五重奏曲イ短調』は、私の偏愛する曲の一つだ。中でも第4楽章、無限上昇音階的なフガートによるイントロを経て静かに立ち上がってくる主題の放射する多幸感に浴するのはまさに至福の時。

長い間パリ器楽アンサンブルのLPで一緒に入っている七重奏曲と共に楽しんでいたが、いかんせん録音が古く、最新録音で楽しんでみたいと思い検索して見つけたのがこのアルバム:

Camille Saint-Saëns: Piano Quintet
in A Minor, Op. 14
Quatuor Girard
Guillaume Bellom (pf)
(2019)

Quatuor Giraud はメンバーが全員兄弟。ピアニストも同世代で、2010年頃から活動しているフランスの若手とのこと。ライブということもあるだろうが熱気と意欲、そして粋なセンスにあふれていて、それでいて踏み外す所のない安定感もある。第4楽章は速めのテンポを取っており、初めて聴いたときそのテンポで最後まで行けるのかと思ったがまったく問題ない。素晴らしい指回りとアンサンブルである。録音は残響が多めで響きが深く艶もある。ライブ会場のFondation Singer-Polignac(シンガー・ポリニャック財団)は、ラヴェルが『亡き王女のためのパヴァーヌ』を献呈したパトロン、ポリニャック公夫人の由緒正しい邸宅だそうだ。

 

(Oct. 12, 2022; Rev. Aug. 1, 2024)