サン゠サーンス: 動物の謝肉祭 +α
Camille Saint-Saëns: Carnaval des Animaux, etc.
Arco Baleno Ensemble
(2004)
サン゠サーンスを続けてもう一枚。超有名曲『動物の謝肉祭』のCDといえば、やはり入門向けのプロコフィエフ『ピーターと狼』などとカップリングされていることが多いものだが、これは一味違っている。8人のオランダの現代作曲家が作曲した8曲が組み合わされているのだ。そこに登場する動物とは…
- ラクダのキャラバン Camel caravan (Marc Matthys)
- 死んだ成金の葬列 Cortège des espèces bien mortes (Jan Huylebroeck)
- 子鹿のエレジー Elegie pour un faon (Frits Celis)
- 竜の子供 Drakemie (Petra Vermote)
- エレファンタジア(象) Eléphantasia (Roland Coryn)
- うさぎ Konijn (Boudewijn Buckinx)
- カメレオン Kameleon (Yves Bondue)
- 孔雀 Pauw (Lucien Posman)
象が本編とかぶっている以外はどれも新顔だ。(「死んだ成金」という翻訳は合っているのかな?)もちろんサン゠サーンスとは時代が違うので素直に動物を描写したような曲はなく、現代的にひねくれているのだが、妙に耳に残るフレーズがあったりして結構楽しめる。『うさぎ』などこっちが孔雀なのではと思うほど現実のうさぎの描写としては優雅にすぎ、まるで眠りからゆっくり覚めて走り出すような感じの音楽で、本編に亀がいるからそのつながりで入れたのだとすると結構それもアリかと思ってしまう。
いずれにせよ、これが「正しい」続・動物の謝肉祭だと押し付けるものでは全くなく、一種の高級な遊びとして楽しむべきものだろう。こういう遊び・ユーモアの精神を実現する姿勢とそれを成立させる環境に敬意を払いたい。
演奏自体はとても整っており響きも豊かで理想的(少し立派すぎるくらい)。
追記 (Aug. 1, 2024):
『題名のない音楽会』でも、かつて黛敏郎が司会の時代に似たような企画があったらしい。歴史を振り返る番組で一瞬見ただけであり、うろ覚えなので間違っているかもしれないが。
追記2 (Aug. 31, 2024):
アーティストの他の録音を見るというボタンクリック一つで可能な操作を、今では習慣的に行うようになったが、最初この記事を書いた頃はまだ探索の方法としてそれほど使っていなかった(というよりもまったく信頼していなかった。実際、アーティストのタグが付いていなかったり、リストが完全でないことが結構ある)。このArco Baleno Ensembleについても、改めてリストされているものを眺めていると中に興味深いものが潜んでいた。下は、ハイドンのザロモン交響曲のいくつかを室内楽に編曲したもの(2点ある)。編曲者はペーター・ザロモン自身である。第2回のフンメルによるモーツアルトの交響曲編曲と似た編成であり、やはりフルートを添えているのが特徴的。華やかなサロンの音楽になっている。演奏は清潔感がある上品なもので、特に細かい音階的な動きが生気にあふれている。
Franz Joseph Haydn:
Symphony No. 94 in G Major
"Paukenschlag", Hob. I:94
(arr. Johann Peter Salomon)
Arco Baleno Ensemble
(Released 2006)
(Oct. 8, 2022; Rev. Aug. 1, 2024; Aug. 31, 2024)