ブリス: ヴィオラソナタ / ピアノ四重奏曲
コベット・コンペティション関係の探索が続いたが、少し離れて同時期に活躍した他の作曲家も尋ねてみたい。例えばアーサー・ブリス。名前は聞いたことがあるが作品の方はまったく知らない。いくつか聴いた中で気に入ったのがこのアルバム。初期(1915年)の『ピアノ四重奏曲』、戦間期の『ヴィオラソナタ』(1933年)、『オーボエ五重奏曲』(1927年)が入っている。
Arthur Bliss: Piano Quartet
Maggini Quartet
Peter Donohoe (pf)
(2001)
『ヴィオラソナタ』は初演も行ったライオネル・ターティスに触発されて作曲されたもの。ターティスのために書かれたヴィオラ作品としては、ウォルトンの『ヴィオラ協奏曲』が非常に有名で、時期もそちらの方が4年早い(1929年)。この『ヴィオラソナタ』を聴くと、第1楽章開始部分などそのウォルトンが後に書いた『ヴァイオリンソナタ』(1949年)と雰囲気が似ていて面白い(Naxosのブックレットによると、プライベートな初演ではウォルトンが譜めくりをしたとのこと)。やはり第一次大戦前とは決定的に異なっていたであろう、戦間期から特に世界恐慌を経て終戦期までの重苦しい空気の反映であろうか。当時のラジオからこういうヴィオラの音楽が流れる場面を想像するとなぜか妙にはまる気がする。フリアント後半の激しい重音の連続とハイポジションへのシフトは目覚ましい。
初期のブリスは一般にモダニストとして知られているが、この初期の『ピアノ四重奏曲』を聴くとそうでもなく、ハウエルズを思わせる民謡風の旋律がベースになっている。その上でピアノの豪放・華麗さも楽しめる力作だと思う。長さもコンパクトで聞き惚れているうちに終わってしまう。なお、ブリスは王立音楽大学にいたとき、同門で一歳下のハウエルズの才能を尊敬していたそうである。
Arthur Bliss: Viola Sonata
Christian Euler (va)
Paul Rivinius (pf)
(2012)
『ヴィオラソナタ』は、少ないながらもまずまず録音があるようで、もう一つ、バックスとヴォーン゠ウィリアムズのヴィオラ曲を組み合わせた好選曲のアルバムがあったので聴いてみた。こちらはヴィオラがやや縦割りというか、几帳面に拍子を刻む感じがして窮屈に感じた。フリアントの終止部分でインテンポを崩さない所などから見て、意図的にそうしている気もしなくはないが、呼吸がやや感じづらかった。ただ、音色は綺麗で滑らかなので好みの問題かもしれない。ピアノについてはどちらも文句なしである。
(Jan. 27, 2024)