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// by 折場 捻人

ゴルトマルク: ピアノ三重奏曲第2番

ゴルトマルクはヨアヒムと同じ1830年にハンガリーに生まれ、ヴァイオリンに秀でた作曲家として知られる。主にウィーンで活躍した。今回初めて聴いた『ピアノ三重奏曲第2番』は、有名な『ヴァイオリン協奏曲』とほぼ同時期(1879年)の作品。曲想はロマン派の範疇で保守的だし楽器の技法もやや定型的な感じがするものの、その響きは効果的であり、楽章の変化にも富んている。抒情的かつエレガントな面の優った佳品だと思う。第2楽章スケルツォは6/8拍子の常動曲で、ちょっとタランテラを思わせるところがある(ただ、特にイタリア的ではないのでこの譬えは良くないかもしれない)。中間部はヴァイオリン協奏曲の第2楽章を思わせる美しい旋律が印象的。終わりの方でピアノの弱音で奏される急速な3連符の流れの上に中間部のテーマが戻ってくるところも良い。終楽章は力強いリズミカルな主題とシューベルト風の優美な副主題が対比され入念に展開されていく。総じて、この頃の穏健なウィーン趣味が反映された作品の一つなのだろう。

Karl Goldmark: Piano Trio No. 2
in E Minor, Op. 33
Thomas Albertus Irnberger (vn)
Attilia Kiyoko Cernitori (vc)
Evgueny Sinaiski (pf)
(2011)

ヴァイオリンのトーマス・イルンベルガーは以前ビーチのアルバムでも取り上げた。ザルツブルク生まれとのこと。ギトリスに師事したことがあるそうで、所々で聴かせる個性的な音などにその影響があるのかな、とも思ってしまう。イルンベルガーはこれ以外にもゴルトマルクの曲を録音していて、下のアルバムには『ヴァイオリンとピアノのための組曲』、『バラード』、『協奏曲第2楽章』の3曲が入っている。『組曲』も初めてだが、一度聴いただけで耳に残る感じ(特に最後の第5曲)。『協奏曲』は古くから名のあるヴァイオリニストが録音を残していて、ミルシテインのものなど端正で素晴らしい。イルンベルガーもさらに別のアルバムで全曲を録音(オーケストラ伴奏)しているが、こちらはピアノ伴奏で、特上の小品として切り出して演奏されることもある第2楽章『エアー』のみ。冒頭の弦五部が弱音器を付けての前奏などはオーケストラ伴奏の方が効果的ではあるものの、それ以外はピアノ伴奏でも十分堪能できる。

Karl Goldmark: Violin Concerto No. 1
in A Minor, Op. 28 - 2nd Mov. "Air"
(version for violin and piano)
Thomas Albertus Irnberger (vn)
Evgueny Sinaiski (pf)
(2007)

 

(Jun. 1, 2024)